痔だ。
おれはずっと痔をわずらっている。

 

痔を発症したのは高校1年生のはじめ。

高校に入学し、昼食がバランスのよい学校の給食から母の手作り弁当に変わったことが原因だと当時は勝手に思っていた。しかしこうやって振り返ってみると、母の弁当にはちゃんとサラダも入っていたし、栄養面でもまったく問題のないおいしい弁当だった(ありがたい話だ)。つまりこれが痔の直接の原因でなかったことは明白だ。ではなぜおれはこのとき痔になってしまったのか。なぜかと聞かれれば、時がきたと答えるほかない。初潮のようなものだ。

 

それから十余年、ずーっと"軽度"な痔だ。

そう、おれの痔はきわめて軽度なのだ。痛みはまったくない。程度が進むとイスに座れなくなるとか、階段が降りられなくなるとか聞いていたがそんなことは予兆すらないし、そこからイボ痔や痔ろうといった、スカルグレイモン的な負の進化も遂げていない。排泄に関してもシステムオールグリーンだ。都度トイレの水が朱に染まる以外、岡田准一宮崎あおいと同様の仕組みで排泄している。

 

もう何年もずーっとこうだから、トイレの水が真っ赤でもいまさらなんともおもわない。むしろ逆に血が出てないと『おっ』ってなる。スーパーで豚肉が思いがけず安かったときの、近所でランボルギーニを見かけたときの、『おっ』だ。通常と異常が逆転してしまっているのだ。

 

何度か治そうかと思ったこともある。普段行かないひとつ離れた薬局でボラギノールを買い、お風呂のときに肛門の裏表に塗布するのだ。お風呂でひとり肛門にヌリヌリするたび『なるほど...』とひとりごちてしまうのを禁じ得ない。しかしそれも一週間ぐらい『なるほど...』すると飽きてしまうので、結局そのまま忘れてしまう。使いかけのボラギノールが家に3本ほどある。

 

しかし、日常という幻想は脆くも儚い。
肛門急を告げる。2年前ぐらいだったが、一度異常な出血を経験した。

 

最初はおれのおしりの下で小さな三島由紀夫が自決したのかと思ったが、どうやら違うようだった。『赤い』というのは眼前に広がるこの事象において適切な形容詞ではなかった。それは、これまで出会ってきたヤツらとは違う"なにか"だった。

 

おれは畏れた。

排泄時の異常な出血は大腸ガンの症状だ。

 

すぐにおれは近くの肛門科をやってるクリニックに電話をかけた。

 

『排泄時に出血しまして、いや、痔ではないような気がするんです。いや、痔は痔なんですけど、ちがくてですね、』

 

焦りからか一休さんのとんちみたいな問答になってしまう。ええい、こっちはガンかもしれんのだ、落ち着いてなどいられるか。こちらの焦りが伝わったのか、その日に診てもらえることになった。すぐに車をかっ飛ばして診察室に飛び込んだ。

 

『痔ですね。』

 

いや知っとるわい。痔ですわい。そうじゃなくてオイラ、痔、かつ、大腸ガンの欲張りさんなのよ。サーティワンのチョコチップドチョコレートみたいに、ダブルでチョコなの。アタシの肛門がポッピングシャワーなの。おわかり?アンタもっとちゃんと調べなさいよ!!キー!!

 

処方された薬を肛門に塗布したら2日でふつうにおさまった。ふつうに痔だった。

そしてまた一週間ぐらいで『なるほど...』するのに飽きて、すぐいつもの軽度な痔にもどった。

 


ここ1ヶ月ぐらいまた肛門から異常な出血が確認されているが、かつての経験からきょうも安心してケツを拭くことができるのだ。

 

人は歴史から学ぶことができる。

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

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最高のレジャー


AV、借りてますか?

 

いや知ってる。先生はいま知ってる上で聞いた。お前らは借りていない。

 

借りてくれ。なぜかというと、AVを借りにいくのは最高のレジャーだから。今回はライフハック記事だ。みんなの力で1500はてブぐらいつけて、この記事をはてブ年間ランキングに載せてくれ。頼む。あと先に言っておくと、この記事は読み終わるまでに2回大きく話が逸れる。

 


まずAVを借りにいく上で一番重要なのは身だしなみ。

 

おれはいまから最高の女とデートをする。そういった気持で臨むのがよいだろう。ぼさぼさ髪でジャージのままではこのレジャーを楽しみきれない。

 

まず朝シャンをして髭をしっかり剃り、そのやぼったい度のキツいメガネをはずしてコンタクトをつけなさい。そしてその上から丸レンズで細フチの伊達メガネをかける。ワックスもつけるがトップをふんわりさせる程度だ。そしてパリっとアイロンがかかったシャツに袖を通し、細身のジーンズを合わせれば完璧だ。

 

『リンネル』みたいな雰囲気が望ましい。『リンネル』は女性誌だけど、とにかくそういう、高橋一生的な感じにしてくれ。そこからがスタートだから。

 

ここまできたらもうすでにあなたはAVを借りにいく楽しさを感じはじめているハズ。ただ家でボーっとXVIDEOS見ているだけでは味わえない、この有意義な休日をココロとチンポで感じよう。

 

話は逸れますが(①)、やはりXVIDEOSで思い出すのは猪瀬元都知事ですけども、アレ、ちょう恥ずかしいよね。5000万円の模型がバッグに入らなかったのも相当に恥ずかしかったと思うんですけど、アレもかなり恥ずかしい。(知らない方に説明すると、去年の夏ぐらいに猪瀬元都知事ツイッターに上げた自身のPCの画面にXVIDEOSをブックマークしてるのが写ってしまっていて、軽く炎上?した。)

 

5000万円のときはマスコミやら都議会やら都民やら方々からツッコミがありました。そのときは

 

『入らないじゃないか!』『ウソをつくな!』

 

というような、こちらもヤジの飛ばしようがあったと思うんですけど

 

『XVIDEOSを見るな!』

 

とは言いづらいじゃないですか。やっばり、みんなXVIDEOS見てるし。自分のことを棚に上げて他人を糾弾するのって、ちょっと心理構造上むずかしい。あと、大声でXVIDEOSって言うのはやっぱ恥ずかしいし。

 

でも猪瀬元都知事としては、つっこまれたいと思うんですよ。5000万のくだりのときは、報道された絵面がちょっと滑稽に映ってしまったのもあって内外からかなりつっこまれたはずなんですが、このtwitterを中心として話題になったXVIDEOS事変に際しては面と向かってつっこまれることは少なかったはずなんです(知らんけど)。

 

つっこまれて笑いになることで場がなごむというか、罪を犯した本人の心が軽くなることってあると思うんです(当然違法にアップロードされた動画を試聴するのはいけないことですが)。だからもし猪瀬元都知事にメチャメチャ仲良しの親友(ダチ)がいたらきっといい感じにつっこんでくれたはず。傷ついた猪瀬元都知事をさらに追いつめるようなつっこみではなく、救ってあげる愛のつっこみを。

 

だからおれが猪瀬元都知事を、いや、いのっちを救ってあげたいのよ。

まず親友であるおれがいのっちの講演会に行くじゃん。

そんでその講演会でいのっちが参加者から質問を受けるワケ。

 

『政府による幼稚園無償化案についてどのような意見をお持ちですか?』

 

いのっち聞かれるわ。そしたらいのっちこう答える。

 

『無償化案はとんでもない的外れです。もしこの施策が現実のものとなればそれによって現場はさらに過酷な状況に置かれることになるでしょう。』

 

いのっち答えるわ。いのっちは頭いいから難しい質問にもちゃんと答えられる。

そこでおれが遠くの席からからヤジを飛ばすわけよ。

 

おれ『でもおまえは無償でエロ動画見てたけどな!(爆)』

 

いのっち『ちょ!おまえ、やめろや!!(核爆)』

 

会場『『『どっ』』』

 

はーーーーー最高。やっぱ友達ってイイよね!

 


話を戻します。

 

身だしなみを整えて、そこからが本番です。さっそくAVを借りにいきましょう。
ここでクエスチョンです。AVを借りるとき、どこのレンタルショップへ行くのがベストでしょうか?

 

ゲオと答えたあなたは黒柳。ツタヤと答えたおまえ、野々村。

 

そう、ここでツタヤに行ってはいけません。なぜならツタヤのAVコーナーには旧作が一切ないため、すべて新作、準新作から選んで借りなくてはなりません。旧作であれば1本100円で借りられますが新作となれば300円は超えてきますので、そのまま知らずにたくさん借りるとシールドライガー買えるぐらいの値段になってしまいます。その点ゲオには少ないながらも旧作も置いてありますので、ゲオに行きましょう。

 

他のコーナーと比べてなぜか湿度が15パーセントほど高く感じられる18禁コーナーの中に入ると、たくさんのAVがあります。ここから先はみなさんの自由。趣味嗜好にわたしから口を出すことはありません。各自好きなものを借りるとよいでしょう。何枚借りてもかまいません。先生はみなさんの独創性に期待していますよ。

 

ひとつ注意ですが、タウンページぐらい厚みのある中古AVホルダーをロボットのように高速でめくり続けるおじさんがいます(どの店舗にもいますが、すべて違う個体です)。こちらから近づいたりしなければ危害を加えてはきません。臆病な生き物なので驚かせないようにしましょう。


先生は企画モノ3女優モノ1の4枚構成ですね。基本はOLモノ、ナンパ、『SCOOP』レーベルなどが多いです。やはり企画モノは当たり外れが大きいので、安定した『MOODYZ』の女優モノも1本だけ借りてしまいます(修業が足りませんね。トホホ。)。

 


話は逸れますが(②)、なんで『SCOOP』レーベルの女優さんてあんなに小芝居うまいんですかね?演技力が妙に高くないですか?なんか『素人っぽさ』という演技というよりは、コント的な演技のうまさという意味でなんですけど。

 

例えばソープに来たらお姉ちゃんが出てきたっていう設定のAVありますよね(みんな大好きなやつだね)。そのAVで姉弟が偶然ソープで出会ったときの最初にひとこと。

 

『えっ、タクヤくんも、こういうおみせ来るんだ…(照)』

 

従来のAVであればだいたいこういうスタートになるんです。知ってる。おれ、そういうのたくさん見てきたから。でもこういうのってなんか、エロゲに出てくる血の繋がってない姉っぽいというか、ちょっとフィクション感が強い。ただこの『SCOOP』の場合は、

 

『はあ!?ちょ、タクヤ、おまえなんでこんな店来てんだよ!』

『いや自分で拭けよきもちわりーな(笑)』

『おかあさんに言ったら殺すから!』

 

みたいな、ちょっとホントっぽい距離感なんですよね。いや実際の姉弟はこんな感じではないのは知ってるんですけど、姉弟コントの距離感ていうか。ホントに理想のお姉ちゃんて感じで『こんなお姉ちゃんおくれ~~~~~っ!!!』ってポルンガがいたらナメック語で叫びたいぐらいなんですけど、それぐらい最高。

 

なんなんですかねこの演技力。みんなテアトルアカデミー出身なの?

 


話を戻します。


AVを選んだら、さっそく借りに行きましょう。

 

ひとつ気をつけなければならないのがカードの有効期限です。期限が切れているとその場で更新しなければならないのですが、AVだけを借るために免許証や住所を晒すのはハチャメチャに恥ずかしいため、うっかりすると期待に夢ふくらませたあなたのオオカミ王ロボも恥ずかしさのあまり豆助になってしまいかねません。平成最後の和風総本家カレンダーがあなたの陰茎(チンポのこと)になるのはテレ東としても望ましくないので、事前にしっかり有効期限を確認しましょう。

 

加えて、AVを借りるときはAVだけを借りる。これが鉄則です。

 

お笑いのDVDを借りてカモフラージュする必要はありません。 カウンターにAVとゲオのカードだけを置き、『一週間で。』とハキハキと対応しましょう。そうすればぽっちゃりモノ3枚・純愛モノ2枚のフルハウスというキモめのハンドで挑んでも決してビビられたりはしません。小声でボソボソしゃべってるとナメられるので、『ミートラバー』というドミノ・ピザのラインナップになぞらえたあだ名をつけられます。

 


無事にAVを借りて外に出ると眩しい太陽があなたを照らし、最高の休日のはじまりを予感させます。そのころにはもう、あなたはAVを借りることの楽しみを完全に理解できているはず。

 

自分でしっかり吟味して、お金を出して借りるという行為、そこにすべての楽しさが詰まっています。それがこのレジャーの本質なのです。観て、ヌくというのは付随的なものに過ぎません。

 

まだAVを借りたことのないデジタル世代のみんなも、いのっちみたいに最近XVIDEOSばっかりでDVDを借りに行ってないみんなも、今度の週末はゲオ南アルプス店に集合だ!

 

 

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亜久津の意地


テニミュの空耳が好きだ。

 

テニミュというのはテニスの王子様を原作としたミュージカルで、10年ぐらい前、ニコニコ動画がサービスを開始した最初期に流行った動画の一群だ。動画上に直接コメントを流すことができるという画期的なサービスにみんな夢中になった。最初はコメントのほとんどが動画の感想だったが、だんだんと動画に対してのツッコミやボケたりする人が出始めた。

 

それが発展して、当時のニコニコ動画ではテニミュなどのミュージカルのセリフや歌に勝手な空耳をつけて遊ぶというノリが起こった。同時期に流行ったものとして新・豪血寺一族などがある。これも空耳要素があった。初期のニコニコ動画といえばとにかく空耳なのだ。

 

はじめてテニミュの空耳を見たとき、おれは死ぬほど笑った。

 

まぁ~~~~笑った。おもしろフラッシュ倉庫の『のび太のわさび』と同じぐらい笑った。つまり人生で最も笑ったという意味だ。衝撃的な面白さだった。『猫駆除だ!』で狂ったように笑っていた。

 

おれはいまもテニミュの空耳が好きでたまに見ている。さすがに当時のようにひきつり起こしながら見ているわけではないが、よくできた空耳には爆笑というより感心してしまう。というのも、テニミュの空耳には完成がない。当時から10年ほど経った今でも新しい空耳が生まれたりするのだ。

 

無数にあるテニミュ空耳の中でも飛びぬけて好きなものがひとつあるのでここに紹介したい。

 

それはニコニコ動画内では『有機vs人参』というタイトルで知られるテニミュ動画の空耳だ。ミュージカルの内容は主人公・越前リョーマと亜久津仁の試合の場面で、そのふたりの死闘のさなか、二人の試合を分析した青学の部長・手塚がテニスにおける精神面の重要性を説く場面。手塚はこう述べる。

 

『テニスは技術もさることながら、メンタル面が大きく左右するスポーツだ。亜久津の意地と越前の勇気、より強いほうがこの試合を制す。』

 

この文中の『亜久津の意地』に『あくつのいぢ』と空耳がつく。

 

この空耳を見つけたヤツはすごい。マジですごい。ここで字面だけ見てもまったく面白くないとは思うが、とにかくすごい。(いちおう補足しておくと涼宮ハルヒシリーズや灼眼のシャナシリーズで有名なイラストレーターの名前が『いとうのいぢ』)

 

テニミュの基本として、演者はずっと歌って踊っているのでセリフの発声がおぼつかない場面が多々ある。動画はたった10分ほどでも実際の公演はきっと2時間ぐらいあるはずなので(よく知らないが)、呼吸が追いつかなくなるのは当然だ。そこで生じる不明瞭な発音に、母音の相似や聞き慣れない固有名詞(必殺技、学校名・個人名など)が絡まると空耳が生まれやすい。

 

『下克上だ!』→『猫駆除だ!』
『ドライブBです!』→『ドMビジネス!』

 

といった具合だ。

それに反して手塚が『亜久津の意地』と発する場面では、手塚は踊ってもいなければ歌ってもいない。直立のままはっきりとした滑舌で『亜久津の意地』と言っている。本来であればもっとも空耳が生まれにくい箇所だ。

 

そこで『あくつのいぢ』だ。

 

『亜久津の意地』と『あくつのいぢ』は音が完全に一緒だ。だが本来『あくつのいぢ』という言葉は存在しない、架空の単語だ。架空の単語でありながら『いとうのいぢ』と掛かっている不思議な単語だ。ほかのテニミュでもこのような特殊な空耳は存在しない。

 

ほかのテニミュ空耳で使われる存在しない言葉といえば『クッソルケン』などがあるが、『クッソルケン』は本来ある日本語に掛かっているわけではない。どうしても『腐れ縁』が『クッソルケン』にしか聞こえない、というものだ。

 

また『猫駆除』も本来は存在しない熟語だが、『猫』『駆除』というもともと存在する単語の組み合わせだ。たしかに『腐れ縁』を『クッソルケン』とした人、『下克上』を『猫駆除』とした人、この人たちもすごい。ただ、『あくつのいぢ』はそういった基本的な空耳とは一線を画したすごさがある。

 

さらに言うとこれを空耳として『あくつのいぢ』と文字におこしたとき、多くの人が「これは『いとうのいぢ』と掛けている」というのにパッと気づけるのもすごい。『ぢ』という五十音の特殊性がこれを成す大きな役割を果たしているのだ。テニミュ動画では次から次へと連続して空耳が流れるため一瞬で理解できない複雑な空耳は敬遠されるが、これはよく練られている上に理解が容易だ。つくづくこれは奇跡の空耳だ。本当にすごい。

 


この文章を読んでるひと全員ピンときていないと思うが、『あくつのいぢ』はとにかくスゴいのだ。みんな年末年始を利用してテニミュ空耳動画をもういちど観てほしい。頼む頼む頼む~~~~~~~~~

 


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佐藤の弟が東大に入った

 

 
佐藤(仮名)は小学1年生のおわりに転校してきた、ちょっとおとなしめの、メガネの男だった。おれと出席番号が近く、家も近所だったのですぐに仲良くなった。それからずっと一番の親友だった。

 

彼は医者の息子で、ほかの友達とくらべてすこし裕福だった。ある日佐藤の家に遊びに行ったとき、おやつに小さなピザが出てきたのをいまでもよく覚えている。ウチの実家ではおやつにピザの名を冠する食物なぞ出ない。親が知り合いの葬式に行かなくてはならないときにだけ現れる、神がキャノピーにまたがりて我らに賜りし僥倖、それがピザだ。そのピザが佐藤の家ではおやつ扱いだった。

 

佐藤の家にはおもちゃもいっぱいあった。佐藤には弟が2人おり、遊びに行くたびにおとこのこ向けのおもちゃが増えていた。戦隊ヒーローの超合金ロボや仮面ライダーの変身ベルト、ゾイド、ビーダマンなどなんでもあった。さらに毎年夏休みになるとグアムへ家族旅行に行っていた。おれはグアムがなんなのか知らなかったので羨むことすらできなかったが、毎年くれるお土産のマカデミアナッツチョコレートを楽しみにしていたものだった。

 

さらに元看護士の佐藤のお母さんはかなり若く、めちゃめちゃキレイだった。放課後、佐藤の家のリビングでゲームやってたら、そのお母さんがおれの目の前で佐藤の小さい弟におっぱいをあげはじめた。おれはもうゲームどころではなく、フヌケた顔でおっぱいを凝視していたのだが、

 

『やだあ、藤原くんおっぱいみちゃだぁめ(笑)』

 

ってかわいい声で言われてめちゃエロだった。佐藤の家はとにかく最高だった。

 


佐藤はおれと同じでおとなしい性格だった。休み時間はサッカーやドッヂボールではなく、ふたりでお絵かきをして過ごしていた。ふたりともコロコロコミックが大好きだったので、それのまねをした漫画をいつも書いて笑っていた。

 

しかしそのおとなしかった佐藤が中学への入学を期にすこしずつ変わりはじめてしまった。おれと佐藤は同じ陸上部に入っていた。ふたりとも運動が好きではなかったが親に文化部はダメだと言われて仕方なく選んだのが陸上部だった。しかし佐藤は2年のはじめごろから練習に顔を出さなくなりはじめ、夏休みを終えるぐらいには退部してしまった。そしてこのころから佐藤は中学の不良グループとつるみ始めるようになった。不良といってもウチの学校の不良はかなりマイルドだった(おれもみんなもその不良たちと仲はよかった)ので、それ自体はそこまで不思議ではなかったのだが、これがのちに悲劇を引き起こした。

 

その年の文化祭、佐藤を含めた不良グループはバンド演奏をした。いまとなっては楽器を弾けない佐藤がどのパートを担当していたのかも定かではないが、とにかくバンドをやった。その演奏の終わりぎわ、ボーカルが大声でこう言い放った。

 

『メンバーの中に、この場で告白したいヤツがいる!』

 

場がどっと沸いた。当時『学校へ行こう!』が流行っており、テレビのような公開告白が生で観られるとあって全校生徒はめちゃめちゃに沸いた。

 

『佐藤がいまから告白をする!!!』

 

ボーカルは叫んだ。クソみたいだったバンド演奏の10倍は沸いた。しかし、おそらく佐藤の意思とは無関係にボーカルの勝手な思いつきでこのような運びとなったのだろう。場の盛り上がりとは裏腹に、壇上の佐藤はかなりまごついていた。しかしいまさらムリだと言いだせる状況ではなかった。

 

『ぁのう、さ、サトコさん、つ、付きあってくださぃ』


佐藤がやっとの思いで絞りだした言葉はマイクを通したとは思えないほど細く小さかった。『学校へ行こう!』では告白された子がその場でイエスかノーかを答える。だがそのサトコさんは恥ずかしさのあまり、うつむいたまま返事をしなかった。黙して床の一点をじっと見つめていた。さきほどまでの盛り上がりとは対照的に、水を打ったような静けさだった。進行が次の演目の紹介をするまで、沈黙はつづいた。最後まで返事はなかった。

 

保護者席には佐藤のお母さんも来ていた。

 

 


その後佐藤は高校受験に失敗し、すこし離れた私立高校に通うことになった。別の高校に進学するのをきっかけに佐藤と連絡をとることはなくなったが、その後母づてに佐藤は東海大学に入ったと聞いた。

 

『アンタ知ってる?佐藤君の弟、M高の特進受かったわよ。』

 

数年後おれが実家に帰省した際、母が興奮気味に伝えてきた。これはすごいことだった。M高というのは県内で一番偏差値の高い高校で、さらにその特進は県内トップ40名のエリートしか入れないクラスだ。

 

おれは『スゴいじゃん』と言うと同時に、久しぶりに名前を聞いた佐藤のことを考えていた。優秀な弟を持ってしまった、佐藤の気持ちについて考えていた。そのころの佐藤はかつての同級生との接触を避けるようになっていて、同窓会はおろか成人式にすら顔を出さなかった。彼にとって小学校・中学校のことはもう消したい過去なのかもしれない。

 

 


『アンタ知ってる?佐藤君の弟、東大受けるらしいわよ。』

 

先の報の三年後、ふたたび母がホットなニュースをおれに伝えた。聞けば佐藤の弟は、そのエリート集うM高の特進でもトップをひた走っていたという。東京や神奈川であれば知り合いが東大に、というのも珍しくないのかもしれないが、山梨の片田舎で、さらに現役で東大に入るヤツなんてまずいない。ここまでくると地元でも大きな話題になっていた。

 

しかし結局、佐藤の弟は東大を落ちてしまったらしい。おれは少しほっとしていた。東海大学東京大学では一文字違いでも月とすっぽんというか、ガニメデとフィリックスガムぐらい違う。もし弟が東大に入るなんてことになったら、いよいよ佐藤の立つ瀬がなくなる。

 

 


その一年後ぐらいして、母が佐藤は大学を中退して声優の専門学校に入ったと教えてくれた。声優の専門学校をバカにするつもりはないが、声優の専門学校に入ってるヤツの未来が決して明るくないことはわかる。輝かしい道を歩む弟と反比例するように、佐藤はどんどん落ちていくようだった。あ、そうそうと母は続ける。

 

『アンタ知ってる?佐藤君の弟、一浪して東大の理三受かったわよ。』

 

理三て。

スターフォックス64は最高のゲーム

 

おれはここ10年ぐらいあたらしいゲームをプレイしていないが、ここ最近ゲームしたい欲が非常に高まってきている。

 

きっかけはゼルダだ。発売される前から買う気もないのにPVや開発者プレイ動画をつぶさにチェックしていた。武器は剣だけじゃなくいろんな種類があるし、料理とかもできる。映像もめちゃんこキレイだ。しかもオープンワールドらしいのだ(それがなんなのかはよく知らない)。発売されてからの評判もすこぶる良かった。やってみたい。

 

そんでこないだマリオもでた。帽子を投げるとマリオが妙にリアルなティラノサウルスに憑依することができるのだ。さらにニューヨークっぽい街でスクーターにも乗れる。むちゃくちゃだ。世界観どうなってんだ。でもめっちゃおもしろいらしい。やってみたい。

 

マイクラもやってみたい。特徴的なビジュアルのゲームなのでなんとなく存在は認知していたが、どういったゲームなのかは全然知らなかった。最近任天堂You Tubeチャンネルにアップされている『よゐこのマイクラでサバイバル生活』を見て、すごい驚いた。めちゃめちゃ自由でおもしろそうだ。かわいい女の子といっしょにプレイしたらさぞ楽しいだろう。やってみたい。

 

アンダーテールというのにも興味がある。ビジュアル以外でこの作品について知っていることは、インディゲームであること、革命的におもしろいらしいということだけだ。それ以外の事は何も知らない。絵柄がスーファミみたいでかわいい。やってみたい。

 

おれが知らないうちにゲームというのはどんどん進化し、多様化していたのだ。

 

おれにとってゼルダやマリオといえば、ニンテンドー64だ。ニンテンドー64はおれの青春であり、おれたちの青春だった。放課後、チャリのカゴにコントローラーを入れて友達の家に行く。そしてみんなでスマブラゴールデンアイをやるのだ。プレステもあったが、やはり子供のときの思い出はいつもニンテンドー64とともにあった。みんな夢中だった。

 

ニンテンドー64のソフトでなにより思い出深いのは、スターフォックス64だ。おれがこの世界で一番好きなゲームだ。

 

多くの子供たちにとってはじめて触れる3Dシューティングだったであろうこのゲームは、おれの目にもめちゃくちゃ魅力的に映った。美麗なグラフィック、映画のようなスケール、フルボイスのキャラクターたち。小学生のころから何度も繰り返しプレイしていたし、大人になってからも折に触れてプレイをしている。いまだに上手くはないが、このゲームだけはいつまでやっても飽きない。最高のゲームだ。

 

『フォックス! 後ろの敵をなんとかしてよ~』

 

ゲーム史に残る名ゼリフである。何度助けてもくりかえし敵機に追尾されるこのカエルを見ると、敵機よりむしろこのカエル本人を撃ち落としたくなる衝動に駆られるはずだ。

 

何度もプレイするうちに気がつくが、チームの仲間スリッピー・ペッピー・ファルコの3匹はまったく役に立たない。基本的に彼らの役目はプレイヤーが操作するフォックスの足を引っ張ることのみで、それ以外の時間はただベラベラと無意味なことをしゃべっているだけである。

 

だがその無意味なセリフこそがスターフォックスの魅力である。個性的でコミカルな敵キャラが多いので笑えるセリフばかり取り上げられがちだが、じつはカッコいいセリフも多く、プレイヤーの気分を盛り上げてくれる。

 

『さすがだよ 言う事ねえ しかし そこまでだ』

『そうやって親父さんも助けてくれたわい』

『俺の獲物に手をだすな フォックス!!』

 

フォックスの亡き父親の戦友で最年長のペッピーは、フォックスの体力がギリギリまで減ると

 

『決してあきらめるな 自分の感覚を信じろ』

 

と声をかけてくる。シリーズを通して使われる、スターフォックスを象徴するセリフだ。当時はこのセリフのカッコよさにごまかされていたが、こちらももう遊戯王のパックのサーチに命をかける小4ではない。大人になったおれは、このような精神論をやにわに持ちだすところにブラック企業を見てしまう。やかましいだけのカエルなんかよりずっと神経にさわるヤツだ。気がつくとおれはペッピーを撃墜している。長年のプレイで培った連射力とエイムをいかんなく発揮し、一瞬で撃墜する。現実でもこうやって、ムカつく上司にロックオンなしチャージ弾の爆風のみを当てて+1のボーナスをもらいたいところだ(わからない人は広技苑かワザップを見よう)。

 

思えば、主役であるフォックスの労働環境はかなり最悪だ。傭兵という不安定な仕事で、いつ暗い宇宙の底で死ぬかもわからない。そんで命を預ける同僚は、やかましいカエルと役立たずのトリと老害だ。いくらなんでもあんまりだ。真剣に転職を考えた方がいい。

 

かつてスターフォックスゼルダやマリオにも劣らぬ任天堂の人気シリーズだったはずだが、ハードが移り変わるごとにその勢いは衰え、いまでは誰も話題にしなくなってしまった。いつの日かふたたび、彼らが任天堂のスターとして輝ける日は来るのだろうか。