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自己PRその41・ブランデーフォーエバー

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ブランデー。あなたとの日々がこんなにも早く終わってしまうものだとは、想像だにしませんでした。

 

ブランデーとはじめて会ったのは梅雨の、しめった空気が漂う日でした。

 

マルエツの酒類コーナーにいたあなたの姿に心奪われたわたしは、何も考えずにあなたを買い物カゴのなかへ入れ、家まで連れてきてしまいました。いま思えばそれも運命だったのかもしれません。

 

わたしはあなたをそのまま飲むだけでなく、ジャムに入れたり、フルーツを漬けたり、アイスクリームにかけたり、調味料としてひややっこに使ったりしました。あなたは文句ひとつ言わず、わたしについてきてくれました。オチがだいたい一緒なのにもかかわらずです。

 

お蔵入りにこそなりましたが、フランベの予想外の大火によってすこし前髪が燃えたことも忘れることができません。眼前が一瞬にして炎に包まれました。あんなに純粋な悲鳴を出したのは何年ぶりでしょうか。

 

わたしはお酒があまり得意ではなかったので、ブランデーとの付き合い方もよくわかりませんでした。今でもまだわかっていないのかもしれません。それでも毎日飲み続けました。

 

だんだん瓶の中身が少なくなっていくたびに、わたしは一抹の寂しさを感じるようになっていました。いくらお酒が弱いわたしでも、毎日すこしずつ飲めばひと瓶なんてすぐに無くなってしまいます。わたしは責任感と寂寥の入り混じった気持ちで飲み続けました。

 

そしてブランデーはなくなりました。

 

またマルエツに行けば同じメーカーの同じブランデーが売っています。しかしわたしにとってそれは同じブランデーではありません。短くとも同じ時間を過ごしたひと瓶のブランデーだけが、わたしのブランデーなのです。あなただけが、わたしのブランデーなのです。

 

さようなら。どうかやすらかにリサイクルされてください。

 

 

お前が死んだなんて、信じられないよ。
家に帰ったらまた笑顔で迎え入れてくれる、そんな気がしているんだ。
でも葬式も終わって、すこしずつ死の実感がわいてきたな。
お前がいないんじゃあ俺も生きている意味なんてないよ。
俺も死んだら、お前に会えるのかな。

 


“悲しみにとらわれてはダメよ”

 

え?

 

“わたしはあなたと出会うことができて幸せだった”

 

どこからともなく声が・・・。

 

“歩みを止めず、しっかり前を向きなさい・・・”
“忘れないで。わたしはいつでもあなたのそばにいるわ”

 

なんなんだこの声は?もしや・・・!?

 

“釧路の岡田です”

 

ぜんぜんしらない人だった。

 

“すいません、テレパシー先を間違えました”

 

勘弁してくださいよ。

 

“生前からおっちょこちょいだったもので”

 

あ、そうだ岡田さん。天国でブランデーに会ったら、こう伝えてくれませんか。
「お酒に弱い俺だけど、お前のことは好きだった」って。

 

“わかりました。いつか出会うことがあれば伝えておきましょう。”

 

“かわりといってはなんですが、わたしからもお願いがあるの”
“わたしは福井の東尋坊へ旅行に行って、年甲斐もなくハシャいでたら崖から落っこちて死んでしまったのよ”

 

だいぶおっちょこちょいですね。

 

“わたしの代わりに、そのことを今年の『明石屋サンタ』で話してほしいの”

 

死してなお『明石屋サンタ』に未練が。

 

“死んだら全てがどうでもよくなったけど、不思議と『明石屋サンタ』への熱だけは冷めなかったわ”

 

へえ。