チンポをなめているとき、チンポもまたこちらをなめているのだ。その4

 

前回までのあらすじ

ゆうべはおたのしみでしたね。

 

 


気がつくとおれはトゥクトゥクに乗っていた。

 

ここはタイのバンコクで、横にはニューハーフがいる。ついおとといまでは日本にいて、他人と同じような、平凡な日常を送っていたはずだった。しかしこれからおれはニューハーフとセックスをするのだ。人生の変わり目というのは案外このように静かなものなのかもしれない。積み上げるのには多大な労力が要るが、崩れるのは一瞬だ。

 

ピッコロ大魔王の吐いた卵から産まれた魔族みたいなあのメンツと別れてルックナットちゃんと店を出たころには、おれはすっかりベロベロだった。彼らとは会話もろくに成り立っていなかったので、おれはとにかく酒を飲んでテンションを上げることによって魔封波したい気持ちを抑えていた。いきなりルックナットちゃんに『ホテルに行く?』と聞かれたのもあって、とにかくシラフではいられなかった。あのときのおれには酒が必要だったのだ。ルックナットちゃんに連れられて店を出た24時過ぎごろ、おれは完全に酔っていた。

 

つまり状況を整理すると、『おれがルックナットちゃんをお持ち帰りした』のではなく『ルックナットちゃんがおれをお持ち帰りした』というのが正しいことがおわかりいただけると思う。よもやおれの人生にお持ち帰りされる側の役回りがあるとは思わなかった。ルックナットちゃんはスムーズにトゥクトゥクをつかまえ、タイ語で運転手に行き先を伝えていた。『Hotel』という単語だけは聞きとることができた。Let’s fly fly fly 大冒険 不思議な旅が始まるぜ。

 

 


夜の街をトゥクトゥクが駆ける。ニューハーフと外国人の2人で妖怪変化もぶっとばしタイのマシンで今日も翔ぶのさといった風情だったが、突然、ルックナットちゃんがおれに尋ねる。

 

『あたし女の子じゃないけど、ほんとにいいの?』

 

おれをお持ち帰りしておいていまさらそのセリフはどうかと思ったが、しかし酒に酔ってもこの藤原、とても紳士的な男である。こんな特殊な状況下においても女の子にロマンティックあげるよ。そういう男なのだ。

 

『べつにオレはキミが男でも女でもどうでもいいよ。ただおれはキミのことがかわいいと思った。それだけだよ。』

 

このときのおれはメチャメチャかっこよかった。ルックナットちゃんのXY染色体がXXになるぐらいかっこよかった。内心いまからニューハーフとホテルに行くという状況にビビりまくっていたが、そんなことはおくびにもださない。相手を気持ちよくさせるのがセックスだ。セックスはもう始まっているのだ。

 

『うれしい。ありがと。』

 

そういって彼女はおれにキスをした。

 

 

 


トゥクトゥクに乗っておよそ10分ぐらいだったと思うが、おれたちはさびれたホテルについた。ルックナットちゃんが受付のおばちゃんと話をして、それからおれに『300バーツ』と言った。おれはおばちゃんに300バーツとチップを20バーツ渡すと、おばちゃんはニィと笑ってあの部屋だ、と指差した。

 

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ベロベロになりながらもホテルの写真を撮っていたおれを褒めてほしい。

 

そしてここでひとつの疑問が浮かぶ。いまさら、ホテルまで来ておいて本当にいまさらなんですが、

 

 

 

『『『ニューハーフってチンポ生えてるのだろうか…?』』』

 

 


え?生えてるよね?

 

だって男でしょ?でもKABA.ちゃんとか切除したって聞いたことあるな。佐藤かよも生えてないらしいし。でもでも!いままで見たニューハーフAVはぜんぶ生えてたよ?え?どっち??生えてないの?ニューハーフってチンポないのかな?おれはチンポ舐めにここまで来たんだけど。生えてなかったらここまで来た意味なくない?あの4人とお酒飲むのだいぶしんどかったよ。あいつらタイ語でしゃべってるから意味わかんねえし、おれは大声で『かえりたーーーーーい!!』って日本語で楽しそうに叫んでごまかしてたんよ?そんな苦労をしたのもこのニューハーフのルックナットちゃんと仲良くなるためだよ?どう落とし前つけてくれんのよ、チンポ生えてなかったら。警察呼ぶよ?おチンポポリスの出動要請よ?『もしもし、警察ですか!?おチンポ生えてないんですけど!!!!!!!!!!』おチンポ消費者庁にも電話かけるよ?『もしもし!?おチンポクーリングオフなんですけど!!!!!!!!!』悪質だわ。善良な市民をつかまえておチンポ生えてる生えてる詐欺とは。そんな詐欺をはたらいてるなんて、地元のみんなになんて自分の仕事を説明するんだよ。地元といえば、高校で同級生だったあいつ結婚するんだって。小学校の時から仲のよかったミッチャンはこんど隣町に家を建てるんだってさ。おれ、なにやってんだろ。遠くタイまで来て、チンポ生えてるだの生えてないだの。むかし付き合ってたあの子はとっくに結婚してふたりも子供がいるんだってさ。あの子は右目のちかくになみだぼくろがあって、それがとてもかわいくて素敵だった。そんな彼女がもうママで、ひとりめの子供はもうすぐ幼稚園だって。フェイスブックでは幸せそうな家族写真がアップされててね。そういうことを考えると、吸いこむ空気がひどく重くなったように感じることがあるんだ。おれがうまくやってれば、彼女と一緒の未来を歩むことだって、あったかもしれないのに。いまのおれはタイまできて、おチンポクーリングオフとか、そういうことを考えている。人生に正しいも間違いもないけど、もうすこし陽のあたる明るい道を選ぶことだってできたんじゃないかって考えたりもす

 

 


チンポ生えてた!!!!

 

 

『よっしゃ』

 

かるく口に出た。

 

これはいい『よっしゃ』であった。ながいながい人生のなかでまれにしかない刹那のきらめき、そんな尊い『よっしゃ』であった。あかちゃんを授かったときに使うはずだった『よっしゃ』をバンコクの安ラブホで出してしまった。そこにあるのはただのチンポなのに。

 

 

 

次回予告

もうちっとだけ続くんじゃ