われわれは死ぬまで性欲と付きあわねばならぬのか

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オナニーがめんどくさい。

 

脳が『シコれ!シコれよ!!おい!おいおいおいおいおいおい!!!!!』っていう指令を出すからしょうがなくシコってあげてるけど、ズボンおろしてオカズさがしてトイレに紙を流しに行くって、もう何回やってんのよ。飽きたって。もういいだろって。こんなことあと50年も60年も続けなくてはならないのかと思うとしんどいよ。だれかはやくなんとかしてくれ。

 

もうイヤになっちゃうよね。もう10数年、何度も何度もなんども感謝のオナニーを繰り返しているのに、おれはネテロ会長と違ってぜんぜん羽化しない。はやくおれもひとシゴきするたびに

 

置 音
き を





ってナレーションが出るような人間になりたい。そんで

 

『かわりに 祈る時間が増えた』

 

ってなってほしい。そんなオナニーをするジジイになりたいんじゃよ。

 

 

もういっそボタンひとつで射精できたらいいのに、って思うんですよね。こうスマホでピッとやったら脳に埋められた電極がビビッと信号を出してオーガズムに達する、そういうのをグーグルが作ってくれたらいい。『オッケーグーグル、ヌいて』って言ったらその場でグーグルがヌいてくれる。駅でもオフィスでもブルーボトルコーヒーでも、スマートにひとヌき。もうそれでいいじゃない。21世紀のオナニーはかくあるべき。

 


 

ーーーアメリカ政府がグーグルマスターベーション以外の自慰行為を全面的に禁止してから120年が経っていた。禁手淫法導入当初はそれに異を唱える者も多く非合法な自慰行為(闇オナ)を行う者もいたが、いまでは『禁手淫法によって性から解放された』と支持する声がほとんどで人々は性欲を忘れつつあった。アメリカ国内の人工授精の割合は98%を超えていた。


そんな世界で生まれたアーカンソー州に住む好奇心旺盛な少年・ウィリアムはちんちんを下に向けてうつぶせでモゾモゾすると気持ちいいことを発見する。

 

放課後いつものようにミシシッピ川のほとりにある彼の秘密基地でちんちんを下に向けてうつぶせでモゾモゾしていたところ、近所に住む変わり者で有名なおじいさん・フォークナーに見つかってしまう。

 

『ウィリアム、落ち着いてよく聞きなさい。それはYUKAONAとよばれるものだ。わたしが子供のころ、わたしのおじいさんはいつも夢見るような表情で語っていた。『腰を悪くした今ではもうできないが、わたしが若いころには毎日YUKAONAをしていたものだった、ちんちんを下に向けてベッドでモゾモゾするとそりゃあいい気分だった』と。まだ小さかったわたしが『それはダメなことだって先生が言ってたよ』と言うと、おじいさんは『おっと、そうだったな』といたずらっぽく笑っていたよ』

 

『いま振り返ってみると、わたしのおじいさんはオナニーを知る最後の世代としてわたしに自慰行為のすばらしさを伝えようとしていたのだろう。彼は社会全体が『性』から遠ざかっていくことを、そのすばらしさを忘れてしまうことが地球に生きる『生物』として間違いだと知っていたんだ』

 

『わたしには彼を理解することはできなかったが、きみがわたしに気づかせてくれた。しかし彼の遺志を継ぐには、わたしはすこし歳をとりすぎてしまったようだ。だから、わたしとわたしのおじいさんの夢をきみに託したい』

 

『ウィリアム、YUKAONAを大切にするんだぞ』

 

『これがYUKAONA…。なんてアメージングなんだ』

 

その晩、ウィリアムは食卓でこのすばらしい出来事について話した。

YUKAONA is AMAZING
YUKAONA is WONDERFUL

それを口にしたとき、彼の父は息子がなにを言っているのかわからなかった。彼の無邪気な笑顔にほほえみさえしそうになったほどだった。しかし言葉の意味を理解した父は強い口調で、もう二度とこんなことはいたしませんとイエス様に誓いなさいとウィリアムに迫った。ウィリアムが母のほうに目をやると、彼女の顔は青ざめ祈るように何かを唱えていた。マタイ18章3節だろう。おそろしいことが起こったとき、きまって彼女はその一節を繰り返しそらんじていた。

 

しかしウィリアムは自分を曲げなかった。自分の行いが一点の曇りなく正しいと心で感じていた。

 

『どうしてボクはYUKAONAをしちゃいけないんだ!?YUKAONAはとってもフリーダムさ!それなのにダディもマムもおかしいよ!』

 

そうしてウィリアムは家を飛び出した。

 

家族と決別したその日からウィリアムは姓を捨て、自らをウィリアム・フォークナーと名乗った。彼が反政府レジスタンス『マスターベーション・オン・ザ・フロア』のリーダーとして群衆を導くことになるのは、そう遠くない未来の話だった…。